2021/02/25
原発の発電コストは本当に安いのか
原発のコストが安いという事を信じている方がいらっしゃるようなので、そうではないという事を説明したいと思います。経産省の原発のコストを考えるの「100万kWの発電施設を一年間運転するのに必要な燃料」の図を見ると、経産省としては、同一量の発電を行うのに、原発はLNGガスの約5万分の1の重量の燃料で発電出来るから、原発のコストは安いと言っているようです。*1
原燃輸送株式会社の原子燃料等の輸送Q&Aによると、「BWR用燃料集合体1体の重量は約250kg程度で、長さは約4.5m、PWR用燃料集合体1体の重量は約670kg程度で、長さは約4.2mです。」が、PWRのウラン燃料は集合体1体で約1億円といれているようなので、約670kgで1億円です。
LNGの価格はよく分からないですが、新電力ネットの天然ガス価格の推移を見て、現在の値上がり状況や手数料等を想定して80円/Lとします。
670kg×(80円/L)/0.75=約71500円ですから、私の想定が正しければ、仮に1体1億円とした場合のウラン燃料のkgあたりの単価は、LNGの約千4百倍です。
原発で使うMOX燃料の価格が約5倍に 1体10億円超(TV Asahi 2017/12/17)とされているので、原発を使い続けるために必須となる1体10億円超のMOX燃料のkgあたりの単価は、私の想定が正しければ、LNGの約1万4千倍超です。*2
もし私の想定が正しければ、原発はLNGガスの約4万5千分の1の重量の燃料で発電出来るとしても、燃料の単価は約1万4千倍超だから、燃料費だけで考えた場合、原発を使い続けるために必須となるMOX燃料の燃料費はせいぜいLNGガス火力の約1/4になるにすぎません。
そして、原発は廃炉に膨大な費用がかかるし、使用済み核燃料はウラン燃料でも10年以上冷却しなければならず、九州電力の見解12を見ると、使用済みMOX燃料はどれだけの期間冷却すれば良いのか未だに分かっていなくて、約500年冷却しなければならないという噂もあるようですが、電気事業連合会の高レベル放射性廃棄物の貯蔵によると、MOX燃料を作るために行われる再処理によって生成されるガラス固化体は、30~50年間冷却しなければならないそうです。
原発の稼働によって出来た放射性廃棄物が殆ど無毒化するためには、244Puの半減期が約8千万年である事を考えると、何億年もかかるのではないでしょうか。
このような事を考えれば、たとえ原発の燃料費がLNGガス火力の約1/4になったとしても、トータルの費用を考えると原発の方がコストが低いという事は全くあり得ないでしょう。
また、原発事故が起きれば膨大な事故対応費用や事故の補償費用が発生するし、原発や再処理工場は、正常に稼働していても放射性物質を放出するし、特に福島第一原発の事故で大量の放射性物質が放出していますので、私は、日本人の原発や再処理工場による健康被害は計り知れないと思っています。*3 *4 *5
尚、再処理の危険性と問題性は、核燃料の再処理の危険性と問題性についてを見てください。
*1 原発や再処理工場に関連する地方交付金や原発推進のための広報費用やその他原発の推進に必要な費用を合計すると、膨大な額になるのではないでしょうか。
*2 純粋にウランやプルトニウムの量だけで考えれば、Kgあたりの単価はさらに高くなります。
*3 私は、1970年代から日本人のがんの罹患率が上昇している原因は、主要には、原発や再処理工場から放出された放射性物質の影響のせいではないかと思っています。*4 私は、原発労働者の健康被害はさらに計り知れないと思っていますが、福島第一原発の事故のせいで放射能の影響が明るみになって来ているため、原発労働者になる事を希望する人が減少しているはずだし、福島第一原発の事故対応作業による現在の原発労働者の被曝や日本の少子高齢化等の影響により、原発労働者の確保はますます困難になり、これ以上原発事故が起きると、人手不足で原発事故の対応が出来なくなってしまう事を大変心配しています。
追記:
原発の発電コストは本当に安いのか(2)も見てください。
追記2:
244Pu等の超ウラン元素は、高レベル放射性廃棄物に分類されない事が分かったため、244Pu等の超ウラン元素に関する記述を訂正しました。
- 関連記事
-
- どうして原発は火力発電より地球に優しくないのか
- JCOの臨界事故の疑問点について
- 地球温暖化で海面が大幅上昇する前に「ヤシマ作戦」を
- 2021/2/13の地震による福島第一原発の影響について(2)
- プルサーマル運転の危険性と問題性について
- 原発の発電コストは本当に安いのか(3)
- 原発の発電コストは本当に安いのか(2)
- 原発の発電コストは本当に安いのか
- 福島第一原発の3号機の爆発について
- メルトダウンに伴う再臨界の可能性について
- 核燃料のリラッキングの危険性について
- 2021/2/13の地震による福島第一原発の影響について
- 使用済み核燃料の崩壊熱を利用した発電について
- 核燃料の再処理の危険性と問題性について
- 柏崎刈羽原発の危険性について
コメント