2022/03/14
どうして電子が原子核に衝突するとX線が放出されるのか
Yahoo!知恵袋(物理学)を見ていたら、X線管(Wikipedia)の中で電子が原子核に衝突すると電子から制動放射(Wikipedia)が発生してX線が発生する理屈が理解出来ないという趣旨の質問があり、確かにこの疑問はもっともなので、少し考えて回答したのですが、回答した内容を改善して以下に記しておきたいと思います。
制動放射というのは、一般的には電荷を持った粒子の周りの真空偏極によって発生した仮想光子が電子の急減速や急激な進路変更によってエネルギーを受け取って実光子に転化するという現象なのですが、単純に考えた場合、原子核中の陽子の電荷はプラスで中性子は中性なので、単純に考えると加速した電子は原子核に向かって進んだ場合、原子核中の陽子に吸い寄せられて加速して原子核から離れる時は減速する事になります。
しかしながら、この様に考えると大角度散乱は起きないと思うので、X線を発生させるだけのエネルギーは発生しないのではないかと考えられるのではないでしょうか。
また、電子と核子の間に東京大学の原子核の中にある“強い力”の起源を解明(2007/6/20)で説明されているような、量子色力学で説明出来るような特殊な斥力が働くという話は聞いた事がありません。
そうだとすると、残っている斥力はダウンクォークに備わっている-1/3電荷によるクーロン斥力しかないので、電子はこのクーロン斥力によって加速した電子の大角度散乱が起きてX線が放出されるというように考えるしかないのではないでしょうか。
尚、加速器を使って陽子と電子を光の速さに近い速度で衝突させるとハドロンジェットが発生しますが、この事は、電子とダウンクォークが衝突して衝突したダウンクオークとそれ以外のクォークとの間の距離が伸びて漸近的自由性(Wikipedia)によって真空中に凝縮した仮想クォークにエネルギーが与えられ、仮想クオークが真空中から叩き出されて実クオークに変化した結果であるという事になるようです。*1
因みに、超ひも理論が正しければ、素粒子は極小の余剰次元空間を持つ事になるので、素粒子同士を衝突させた場合にこの効果が表れて来るはずですが、人類が作り出すエネルギーではこの効果を確認する事は不可能であるという事のようです。
*1 東京大学の物質に質量を与えるクォーク凝縮現象を支持する実験的証拠を得ることに成功(2007/6/20)を見てください。
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